コラム KAZU'S VIEW

2019年12月

去りゆく己亥(キガイ)の年の締め括りとして

 師走早々の2日から5日まで金沢で第20回Asia Pacific Industrial Engineering And Management Systems(APIEMS:http://www.apiems2019.org/)大会を開催した.この国際会議はちょうど20年前の1999年10月30日~31日に同じ金沢で開催したものだった[1].当時は学会支部を立ち上げてばかりで,その記念事業として支部会員の皆さんのご支援を得て組織委員会を立ち上げた.この会議は前年韓国・日本(韓国Daejeonで開催)[2]および中国・日本(中国北京で開催)とそれぞれ別々の共同会議として始まり,これを統一し更にアジア太平洋の国々にも参加を呼びかけて,初めてAPIEMSという名称を使った会議として開催するに至った経緯があった.その当時,この国際会議を立ち上げる時に共に汗を流した懐かしい多くの友人を思い出しつつ,今年の会議で顔を合わせた20年前の古き友の数は数名だった.20年という時の流れを感じ,寂しさも覚えた.様々ないきさつで,今回の会議のお手伝いをすることになったが,会議を終えてみて改めて自身のこれまでの人生の区切りを考える機会ともなった.
 20年前の1999(平成11)年の出来事を思い出してみる. 私にとってこの年にはもう1つ,9月26日から29日までInternational Society for Professional Innovation Management(ISPIM)の第12回国際会議を東京で開催していた[3].1年に2回も国際会議を開催する事に携われた事は,その後の私の人生に大きな変化をもたらした.全てが初めての経験で多くの方々にご指導いただき,その後の私の人生の大きな人的資産を作れた機会であった.1985年に北陸の地に来てから十数年経過した四十代後半であった.世紀末でもあった.これを機会に私の活動は海外が中心になって行った.その活動に伴い,海外に多数の知己が出来,過去活動の様々な制約に比べ,自由な雰囲気と価値観の異なる人々との交流は刺激的であった.知らない内に国際会議の要職にも着いていた.研究に対する発想もかなり広げることが出来たような気がした.これらをまとめてInt’l. J. of Production Research(IJPR)という国際雑誌に発表する機会[4]も得られた.この論文をAPIEMS2019の基調講演者であるアメリカの友人が講演の中で参照してくれた事は驚きでもあった.
「歌える事が命,伝える事が魂・・・それぞれ何か授かった理由がある・・みんな役目を持って果たす為生まれて来た・・・誰かの為に頑張る姿をさらけ出す・・」という詩に心が動かされた.この楽曲はKOKIKAの「歌う人」の一節である.KOKIKA[5]とは,本名,吉田亜紀子(ヨシダ アキコ)というシンガーソングライターで1998(平成10年)「愛しているから」でデビューした.ちなみに,KOKIKAは本名の亜紀子(アキコ)を逆読みし,ローマ字化したようだ.親父ギャグより面白い.人生とは自分の役目を見出すことこと,と,この歌詞と自分の20年間を重ね合わすことが出来た事がこの瞬間の共感(心の共鳴)だったような気がする.
 己亥(キガイ)という年は十二支の最後であり, 物事のバランスが必要とされる時期とされている[6].自らの人生のバランスを考えてみるとこれまでの人生のトータルとして,また,これからどれだけの人生が残っているかわからないが,一旦ここで清算してみることにした.このような発想は後ろ向きで自身としてなんともわびしい限りであるが,今後の人生をより前向きにするため,敢えて試みてみよう.対象は成人以降の約50年間である.来年の干支は庚子(カノエネ)となる.庚子の年は,己亥(キガイ)で基本的変革の方向性が決まったもとで,その成果を結実する年とも言われている.「私の来年(アシタ)はどっちだ?」
 
参考文献・資料
[1] N.Tawara, H. Hwang, W. Xu and M. Gen ed., Proceedings of the second Asia-Pacific Conference on Industrial Engineering and Management Systems(APIEMS&99)(1999)
[2] Korean Institute of Industrial Engineers (KIIE) and Japan Industrial Management Association (JIMA), The First Joint Conference of Korea-Japan on Industrial Engineering and Management, Korea Advanced Science and Technology(KAIST), Taejon, Korea, 30-31th, October, 1998
[3] T. Ichimura and K. Ishii ed., Proceedings of ISPIM The 12th International Conference - New roles and Issues of Innovation management in the 21th century-(1999)
[4] K.Ishii, A production research to create new value of business output, Int’l. J. of Production Research,51(23-24),pp.7313-7328(2013)
[5] KKBOX, https://www.kkbox.com/jp/ja/song/5HtOq1rU48.4ciIX4ciIX0PL-index.html, <2019.12.25>
[6] 石井和克,1月のコラム「己亥(キガイ)の年はじめで富士を見たことの意味は!」, https://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/ishii/column.cgi?id=186(2019)<2019.12.25>
以上
令和1年12月

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