コラム KAZU'S VIEW

2024年10月

AIの光と影：ノーベル賞がAIの研究者に与えられた意味を考える：

今年のノーベル賞受賞者の発表が10月7日（月）から生理学・医学賞を皮切りに始まった.日本からの受賞は,10月11日(金)に平和賞が, 日本原水爆被害者団体協議会(Japan Confederation of A- and H-Bomb Sufferers Organizations;1956年-)に授与されることが発表された.来年,被爆80年目を迎えるタイミングでの受賞は,現在の世界が抱える核問題に一石を投じるものとなろう. 受賞理由は,「核兵器のない世界を実現するための努力と核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたこと」,また,「記憶をとどめる継続的な取り組みによって,日本の新しい世代は被爆者たちの経験とメッセージを継承している」[1]となっている. 日本のノーベル平和賞受賞は,NPT(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons;核兵器の不拡散に関する条約,注1)に署名し, 非核三原則(注2)を表明した佐藤栄作(サトウ　エイサク: 1901-1975年) 第61-63代総理大臣が1974(昭和49)年に受賞して以来,50年ぶりである.一方,その他の受賞内容で気になったものは,物理学賞と化学賞の受賞者の研究テーマがいずれもAI（Artificial Intelligence;人工知能）に関するものであったことだ.特に,物理学賞が,「自然科学や宇宙についての発見が対象」というこれまでの認識に対する違和感であった.そこで,AIがノーベル賞の対象となることについて考えて見た.

10月8日（火）にスウェーデン王立科学アカデミーが今年のノーベル物理学賞を授与するのは,米プリンストン大学のジョン・ホップフィールド(John Joseph Hopfield;1933年-,注3)名誉教授とジュエフリー・ヒントン(Geoffrey Everest Hinton;1947年-,注4) カナダトロント大学名誉教授だと発表した.2氏はAIの根幹とも言える「人工ニューラルネットワーク」（神経回路網）の基礎を築いた.人工ニューラルネットワークは,コンピュータ上で人間の脳神経の働きを模して意思決定をするモデルで,AIに膨大なデータを学習させてパターンや規則性を見つける機械学習(注6)やディープラーニング(注7)につなげたことで,彼らは「第3次AIブーム」(注8)の火付け役となった.翌日の10月9日（水）には,ノーベル化学賞受賞者に米グーグルのAI研究開発部門,英グーグルディープマインド（Google DeepMind;注9)最高経営責任者（CEO）のデミス・ハサビス(Demis Hassabis;1976年-),同社のジョン・ジャンパー(John Michael Jumper;1985年-),そして米ワシントン大学のデビッド・ベイカー(David Baker;1962年-)教授の3人が選ばれた,と発表した.D.ハサビスは,同社のAI囲碁ソフト「アルファ碁(AlphaGo;注10)」の開発者で,アルファ碁で2016年に当時の世界トップクラスの韓国プロ棋士李世乭(イ・セドル;1983年-)に勝利したことでも知られる.3人の授賞理由は「計算によるタンパク質の設計」および「タンパク質の構造予測」である.D.ベイカーは,タンパク質構造を予測するコンピューターソフトを開発し,2003年に自然界には存在しない新しいタンパク質を設計したと発表した[14].その結果,新しい機能を持った,「つくりたいタンパク質の形」をつくることが可能になった.D.ハサビスとJ.M.ジャンパーは,ディープマインドの成果としてタンパク質構造予測プログラム「アルファフォールド(Alpha Fold; AF,注12)」と「アルファフォールド2（AF2）」を次々に開発し,2018～20年に発表や公開をした.このAI技術の登場により,ほぼ全てのタンパク質の構造を予測することが可能になり(注15),タンパク質の機能の理解や薬,ワクチンの開発に大きな貢献をしたことが評価された [5].

「第3次AIブーム」と言われる中で,「AI」という用語が庶民化した発端は,ChatGPT(Generative Pretrained Transformer;注16)と呼ばれるチャットボットが2022年に登場したことであろう. 「チャットボット(chatbot/チャッターボット; chatterbot）」とは,「チャット」と「ボット」の合成語で, 人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことである. 「チャット」とは,テキストや音声による双方向での対話を通じて人間的な会話の模倣を目的とした,インターネットを利用したリアルタイムコミュニケーションのことであり, 「ボット」は「ロボット」の略で,人間に代わって一定のタスクや処理を自動化するためのプログラムのことである[23],[24].このChatGPTは, 小説を数秒で要約できるし,コンピュータコードも書ける.脚本まで生成できるポテンシャルがあると,ハリウッドの脚本家らがストライキするまでになった[5].また, ChatGPTは,11月にリリースされた2ヶ月後には, そのユーザーは1億人に達し,史上最速の成長を見せたアプリとなり,その経済的,社会的インパクトは驚異的であった.このChatGPT開発には, アメリカ,カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカーのエヌビディア(NVIDIA)が,オープンAI(注17)に寄贈したGPU(Graphics Processing Unit,注18)を搭載した初代のAI専用サーバーが大きく貢献したとされる[26].第3次AIブームは,機械学習を基板として,インターネット等により収集される膨大な情報（ビックデータ）を繰返し計算処理する膨大な計算量を,GPUという並列処理に特化したプロセッサーのハード化により,人間と変わらない知性を発揮するコンピュータを携帯端末で扱えるようになったことに支えられている.この現実を「AIの父」と評されるJ.E. ヒントンは,AIの発展が産業革命に匹敵する大きな変革をもたらすと考えており,人類がこれまで経験したことのない知的能力を持つ存在との共存に備える必要性を指摘し,以下の「AIに対する危惧」を語っている.すなわち,ヒントンが指摘する4つの「AIの潜在的リスク」とは,（1）誤情報の拡散（AIが生成する偽情報が,社会に混乱をもたらす可能性がある）,（2）雇用への影響（AIの発展により,多くの職業が自動化され,失業問題が深刻化する恐れがある）,（3）制御不能なAIシステム（高度に発達したAIが,人間の制御を超えて行動する可能性がある）,（4）悪用のリスク（権威主義的な指導者などが,AIを選挙操作や戦争の道具として利用する危険性がある）[27] .また,AIに対する将来的リスクについて,マサチューセッツ工科大学（MIT）コンピュータ科学・人工知能研究所（Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory; CSAIL）のフューチャーテック（FutureTech）グループが,共同研究チームとともにまとめた「AIリスク・リポジトリ（AI Risk Repository）」には,「先進的なAIシステム」がもたらしうる700以上の潜在的リスクが上げられている[28].AIの光と影は,その影響力が大きいだけに,人類の将来に大きな夢と共に深刻な課題を投げかける.

人間が生み出した手段としての技術が,人間の生き方,存続の可能性を左右すると言うような深刻な影響を,その原因を生み出した人間自身が考えなければならないという状況は,人間が原子力を手にした時に既に経験済である.しかし,その解決の糸口は未だに見出せていない. 原子力は原子爆弾の使用という悲惨な結果を生み出し,その反省の上に核拡散防止条約などの枠組みができたものの,未だに「核の脅威」は払拭されておらず,逆に「脅威の拡散」が今の世界の状況である.AIの潜在的リスクについての議論も「エネルギー」と「知能」という技術対象の違いはあるものの,同様の体験段階になっている.今回のAIに関するノーベル賞受賞に対する受け止め方は,その点で共通点を持っている.現在,ホモ・サピエンス（賢い人）のみが,ホモ（ヒト）属のサピエンス（カシコイ）種として生き残っている.ネアンデルタール人（ホモ・ネアンデルターレンシス）が絶滅し,ホモ・サピエンスのみが生き延び得た要因として,知識によって道具の改善を継続的に行えたこと,そして,これを大きな集団（組織）としてより効率的,効果的に行えて来たことが指摘されている.その結果, ユヴァル・ノア・ハラリ[30,31]が指摘するように,「人間（ホモ・サピエンス）は神（ホモ・ゼウス）になる」という仮説,すなわち,生物史の中で,ホモ・サピエンスのみが自然の摂理を超えようとし,人類の永遠の課題であった,戦争,飢餓そして疾病を克服し,神の世界に足を踏み入れた.そして,「不死」,「幸福」および「神性」への挑戦を目論む存在になりつつあるという指摘の現実味なのかもしれない[32].インターネットは世界中の情報を即座に共有できる環境を作り出し,この情報を機械学習で瞬時に処理し,意思決定に繋げるという知識処理をコンピュータによって行う.このようなアプローチで G.E.ヒントンが2012年にIRSVRCにおいて画像認識技術の精度を飛躍的に向上させ,D.ハサビスとJ.M.ジャンパーが2018年に第13回CASPで効果的なタンパク質構造予測法を生み出すという研究成果を出している.このプロセスは,世界中の知を競争の場に集め,ゲームを通じて知識創造するという「集団知」[33]（注19）の様相を呈している.そして2022年のChatGPTが人間と機械（コンピュータ）間の知的コミュニケーションを可能とした.これによって言葉や文字で表される「形式知」については,ホモ・サピエンスのサピエンス（カシコサ／理性）の部分が「外部化」されることになろう.その時,「ホモ」の部分が心（感性）と言葉や文字で表現できない「暗黙知」になるのではないか.「共感性を持つAI」を目指すのか,「ホモとサピエンスの共存」を目指すのか,AIがノーベル賞の対象となることで,考えるべき人類の重要な選択肢になってきたと言うことではないか.

(注1)核兵器不拡散条約（NPT）は, 核兵器保有国の増加を防ぐこと（核兵器の拡散を防ぐこと）を主な目的とした条約で,主な内容は「核不拡散」,「核軍縮」,「原子力の平和利用」の3つで構成されており,日本は1970年に署名,1976年に批准している. 締約国数は, 2021年5月現在で191か国・地域となっている[2],[3].
(注2)核兵器不拡散条約採決後に参議院外務委員会において1976(昭和51年)5月21日に採択された決議である.「核兵器を持たず」,「作らず」,「持ち込ませず」との非核三原則が,国是として確立されていることにかんがみ,いかなる場合においても,これを忠実に遵守すること[4].
(注3)J.J. ホップフィールドは,物理学と生物学の理論を巧みに使った.すなわち,磁性の振る舞いに関する物理学のモデルを基に,脳の神経細胞の働きに関するモデルに着目した.人の脳神経は神経細胞が多数張り巡らされ,ネットワークを構成している.この神経細胞同士のつながりを模倣し,入力したデータのパターンを記憶した上で再現するモデルである「ホップフィールド・ネットワーク（再帰型ニューラルネットワーク）」を提唱し,1982年に「機械学習」の原型となる手法を発表した[5].
(注4)G.E.ヒントンは,1986年までに機械学習の手法をさらに発展させ,AIがより深く学習して答えを生み出す仕組みを提示した.この仕組みは,画像などの大量のデータからAIが特徴を見いだし,自動的に学習することができる.2002年には新たな高速学習アルゴリズムを発表し[6],AIが膨大なデータを効率的に処理することを可能にして,機械学習の一種で発展型と言える「ディープラーニング」を飛躍的に進化させた.同氏は2012年のImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(IRSVRC) [7]で「深層畳み込みニューラルネットワーク」によって従来の画像認識技術を超える精度を実現している.この成果により「第3次AIブーム」が始まり,世界中での生成AI(Generative AI;注5)の急速な普及につながった.このような背景から,G.E.ヒントンは「AIのゴッドファーザー」や「AIの父」などの異名を持っている.このためAIを活用したサービスは, J.J. ホップフィールドとG.E.ヒントンの両氏の成果がなければ実現しなかったとされる.現在スマートフォン（スマホ）などの顔認識機能や,翻訳など生活に欠かせない技術となっている[5].
(注5) 生成AI（または生成系AI）とは,従来のAIが決められた行為の自動化が目的であるのに対し,データのパターンや関係を学習し,新しいコンテンツを生成することを目的としている. その代表的なものがChatGPT(注16)で,条件に応じた文章を生成することができ,新たなデータを入力して学習することができ,生成する文章の精度を高めることができる.生成AIが注目されようになった理由として以下の4つが上げられる.①精度向上,②精度向上の背景にある学習量の多さ,③コンテンツ生成のスピードの速さ,④アプリケーションなどの使いやすさの向上[8].
(注6)機械学習(Machine Learning) とは,データを分析する方法の1つで,データから,「機械」（コンピュータ）が自動で「学習」し,データの背景にあるルールやパターンを発見する方法.近年では,学習した成果に基づいて「予測・判断」することが重視されるようになった.機械学習の類義語として,「人工知能（AI）」や「ディープラーニング（深層学習）(注7)」がある.「人工知能」を実現するためのデータ分析技術の1つが「機械学習」で,「機械学習」における代表的な分析手法が「ディープラーニング」と言われている[9].
(注7)ディープラーニング（Deep Learning;深層学習）とは,データの背景にあるルールやパターンを学習するために,多層的（ディープ）に構造を考える方法.一般的なデータ分析は,入力データ（インプット）と出力データ（アウトプット）の関係を直接分析るすが,ディープラーニングは,中間層と呼ばれる構造を設け,さらに多層化することで,データの背景にあるルールやパターンを考えることができる[10].
(注8)第1世代は1950～70年代で電子計算機の登場が人間の頭脳を計算機に置き換えるという発想で,電子頭脳や自然言語などのキーワードで代表された「探索と推論の時代」である.この世代の代表的研究者としては1978年にノーベル経済賞を受賞したハーバート・アレクサンダー・サイモン(Herbert Alexander Simon;1916-2001)がおり, 初めての人工知能プログラムといわれるLogic Theorist(ロジック・セオリスト)の開発などがある.第2世代は1980年代でエキスパートシステム,知識データベース,知識工学と言ったキーワードで代表される「知識表現の時代」であるがテーマは第1世代と同様に人間頭脳の機械化であった.そして,今日の第3世代（2000～）としての「機械学習とディープラーニングの時代」に至る[11].
(注9) Google DeepMind は,イギリスにあるAlphabetの人工知能開発の子会社であるGoogle DeepMind Technologies Limitedとして2010年に起業され,2014年にGoogleによって買収された.ロンドンを拠点とし,カナダ,フランス,米国にも研究センターを持つ.2015年,Googleの親会社であるAlphabetの完全子会社となり,2023年にGoogle AIのGoogle Brain部門と統合し,Google DeepMindに名称変更した[12].
(注10)アルファ碁は,Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムである. 2015年にヨーロッパ囲碁王者ファン・フイ(樊麾/Fan Hui;1981年-)相手に互先（タガイセン,注11）で破った初のコンピュータ囲碁プログラムとなった. コンピュータが人間に打ち勝つことが最も難しいと考えられてきた分野である囲碁において,人工知能が勝利を収めたことは世界に衝撃をもたらした. アルファ碁の登場は単なる一競技の勝敗を越え,人工知能の有用性を広く知らしめるものとなり,世界的AIブームを呼び起こすきっかけともなった[13].
(注11) 互先は,ハンデキャップのない対局を指し,棋力が近い場合に採用される. 囲碁は単純に目数で勝敗を決するとすると先手が有利であるため,一局で勝敗を決する場合,コミ(囲碁ルールの1つ)を用いて先手（黒）と後手（白）の均衡を図る[15].
(注12) アルファフォールドは,タンパク質の構造予測を実行するGoogleのDeepMindによって開発された人工知能プログラムである.このプログラムは,タンパク質の折り畳み構造を原子の幅に合わせて予測する深層学習システムとして設計されている[16],[17]. AIソフトウェア「AlphaFold」は,2つの主要バージョンで注目されている.研究者チームはAlphaFold 1 (2018年) を使用して,2018年12月に開催された「第13回タンパク質構造予測精密評価 (Critical Assessment of protein Structure Prediction ;CASP,注13)」の総合ランキングで1位を獲得した.このプログラムは,部分的に類似した配列を持つタンパク質から既存のテンプレート構造[18]が利用できない,競技会主催者によって最も難しいと評価されたターゲットの最も正確な構造を予測することに成功した[16].
(注13) タンパク質構造予測精密評価(CASP)は,1994年から2年ごとに行われているタンパク質構造予測のための世界的な実験である.CASPは,研究グループに構造予測手法を客観的にテストする機会を提供し,研究コミュニティとソフトウェアユーザにタンパク質構造モデリングの最新技術の独立した評価を提供する.CASPの主な目的は,アミノ酸配列からタンパク質の3次元構造(注14)を特定する方法を進歩させることにあるが,多くの研究者はこの実験を,この科学分野の「世界選手権」と見なしている[19].
(注14) タンパク質は，1次構造から4次構造まで，階層的に構造分類されている．1次構造はアミノ酸配列であり，2次構造は水素結合によって安定化されている部分結合で，らせん状のαヘリックス構造や屏風を折りたたんだようなβシート構造の立体構造をとる．3次構造は，タンパク質を構成するポリペプチド鎖が複数に折りたたまれた立体構造（タンパク質の折り畳み構造）を示し，3次構造のもつ複数のポリペプチド鎖が集合し形成したものが4次構造である．4次構造を形成する各ペプチド鎖はサブユニットとよばれる[20],[21],[22]．
(注15)タンパク質は一般的に20種類のアミノ酸で構成されるが,それぞれひも状に連なっていて立体的に折り畳まれて機能を発揮する.タンパク質の3次元構造でその働きが決まるため,構造が分からないと創薬などの研究開発が進まない.長い間アミノ酸の配列からタンパク質の立体構造を把握することは難しかった.また,構造がまだよく分からない重要なタンパク質も多く残っているとされる. そして,それまでは新しい機能を持つタンパク質をつくるためには,既存のタンパク質に手を加えるしか方法はなかった.これらの従来の課題に対し「計算によるタンパク質の設計」および「タンパク質の構造予測」による問題解決への彼らの成果が評価された[5].
(注16) ChatGPT（チャットジーピーティー）は,OpenAI(注17)が2022年11月に公開した人工知能チャットボットであり,生成AIの一種である[23].
(注17) OpenAI（オープンエーアイ）は,人類全体に利益をもたらす汎用人工知能（Artificial General Intelligence ;AGI）を普及・発展させることを目標に掲げ,AI分野の研究を行っている組織で, 非営利法人OpenAI, Inc.とその子会社である営利法人OpenAI Global, LLCなどの法人から構成される人工知能の開発を行う米国企業である[25].
(注18) GPUは,画像処理装置を意味し, 画像を描写するために必要な計算を処理するもの. より速く,よりきれいに画像や映像を映すには,GPUが欠かせない.また,画像を処理するということは,膨大なデータを瞬時に計算する必要があるため,ビッグデータを処理するのにも適している. データを大量かつ速く処理するために,独特の仕組みとして,並列処理能力に優れている.この能力があることで,複数のタスクを一度にこなすことができる.これに対し, Central Processing Unit（CPU）は,中央処理（演算）装置を意味し, コンピュータの頭脳として機能し,逐次計算からデータベースの実行まで,幅広い処理を行う. 個々のタスクを集中して処理する,連続的な演算処理能力に長けている[29].
(注19) 洞口（ホラグチ）[34]は,「集合戦略」を集団として知識を創造する方法と定義し,集合戦略の採用の結果として創造された知識を「集合知」と呼んでいる.その上で,知識創造のプロセスを「暗黙知」と「形式知」の相互作用として認識し，日本企業組織がミドル・マネージャーを中心としたグループ・レベルでの集合知創造が,個人レベルで行われている西欧企業組織に比して特徴的であるとの視点にたち,事例研究を通じていわゆる「改善活動」の視点で,集合知の上手なマネジメントの組織作りの答えを模索している.なお,暗黙知とは,文字や言葉で表現できない知識を言う.

参考文献・資料
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[32] 石井和克,人生70年代に入った年に思ったこと-不老不死は幸せか-,コラム KAZU'S VIEW2021年12月. https://ishii-kazu.com/column.cgi?id=222 ,2024.10.21アクセス
[33] 洞口治夫, 集合知の経営-日本企業の知識管理戦略-,文眞堂(2009)

令和6年10月
以上

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